平社員で与えられた仕事だけやっていたポジションから現場のリーダー、そして会社の経営者になっていくにつれて、「これまでの常識や物事の見方・考え方」が劇的に変化していくことになった。
組織の中で「リーダー」というポジションに立った瞬間、今までとは違う視野を持たなくてはいけなくなる。
現場の熱気や喧騒から少し離れた位置に立ち、全体の景色を俯瞰しながら舵を取る。
あなたは深く孤独でありながら同時に強烈な使命感を伴う役割。
現場から届く声と葛藤
現場の声は、しばしば耳に届いてくる。
「忙しいんだからリーダーも一緒に作業するべき」
「もっと細かく指示してくれたら動きやすいのに」
確かに同じ場所で同じ作業をすれば、共感も信頼を得やすい。
荒天の中、泥だらけになって働く姿は、部下の心を揺さぶるものだろう。
しかし、“本当に正しい選択かどうか”は別問題。
責任ある立場の人は、常にここで葛藤と迷いを抱えているもの。

本当の仕事は舵を取ること
リーダーの役割は作業を分担することではない。
会社の未来の姿を描いて、目標へ向けて組織全体を導くこと。
あなたの視線は数時間先ではなく、数ヶ月、数年先に向けている。
現場で作業する行動は短期的な士気向上には役立つが、舵取りを手放せば会社・組織という船は荒波に流されて、目的地を見失い難破船になってしまう。
チームを信頼して自分は船の舵取りに専念して本来の役割を全うすること。

小さな変化が異変だと気付けること
リーダーは常に周囲の変化を異変と捉える必要がある。
部下の顔色、声の張り、動きの速さやリズム。小さな変化から疲労ややりにくさの兆しを拾い上げ、芽が伸びる前に手を打つ。
めんどくさいことを先延ばしにするともっとめんどくさいことになることを防止する。
同時にチーム同士が自然に助け合える土壌を整えることも欠かせない。
異なる価値観や能力を持つ人間が集まれば摩擦は避けられないもの。人とはそういう特性があるものと理解しておく。
綺麗事は抜きにして、この事実を踏まえて業務設計する。

順調でも備え続ける
順調なときほど満身は忍び寄る。航海が穏やかなうちに次の嵐に備える策を練る必要がある。
逆境の中では、言葉にならない迷いや不安が空気を重くする。
リーダーに求められる役割は、単なる慰めの言葉や精神論の言葉ではない。
「皆でもっとがんばろー!」
「皆で祈ればなんとかなる!」
「がんばったから神様はみてくれてるよ!」
など言ってはいけない。
リーダーは未来の先に光を見出し、逆境の打開に向けて行動する背中を見せることである
従業員の時間と労力を預かっている以上、自分の都合は後回しのなる。これは美談ではなくて当たり前のこと。
私事で判断を鈍らせれば、皆が乗っている船は簡単に座礁もするし、遭難もしてしまう。
順調なときほど次の嵐に備えておく行動をとるのがリーダーの役目になる。

胸の奥の孤独
重い責任は、実際に誰にでも担えるものではないだろう。
従業員の人生、その奥にある家庭、家族の生活も引き受ける事になる。
軽やかに笑っているようでも、常に胸の奥には重いイカリが沈んでいるような感覚が続いているもの。
このイカリは重荷や重圧ではなく、皆を乗せた船の方向性を見失わないイカリなのであろう。
あなたのリーダーがこの方向を見失わないイカリを胸に抱いているなら、あなたが乗船している船は概ね沈没する可能性は低いだろう。
優れたリーダーは現場に立たずとも現場を常に感じているもの。
声のゆらぎかた、仕草、仕事の速さや丁寧さの変化から状況を察し、言葉にするべきときと、黙って信じる時を見極めている。
部下への信頼と不測の事態への用心が胸の内でせめぎ合っている。
この役割は孤独だと感じる。
冗談を交わし笑っていても、心の奥では、次の一手、二手、三手先まで計算し続けているもの。
行きたくもない仕事関係先との飲み会やゴルフのコンペに参加して、どう未来へ仕事を繋げるかを常に考えている。
一見遊んでいるように見えても、心は決して休まらない。
大切な人を守るために日々、リーダーは思考を巡らせているだろう。

まとめ
リーダーの役割は人を支配して動かすのではなく、仲間や組織を守り安全に目的地へ導くこと
- 権限があるからといって「やれ」とただ命令する立場ではない
- チームが安心して力を発揮できるように、外部からの脅威や無用な障害を取り除く立場である
- 取引先からのプレッシャーをチームに押し付けず、自分が受け止める
- トラブルや不公平な要求からチームを守る
- 不安や混乱を最小限に抑えるために先回りして動く
この行動は舵を握り続けている証。
人を動かすために上から押さえつけるのではなく、チームが自主的に動けるように土台を守ることが役割になる。

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